素晴らしい役者で、いまや人間国宝(2012年〜)の坂東玉三郎さん。
芸にストイックであるのは有名な話ですが、これまでも何度か彼の物の考え方から学んだことがありました。
以下は月刊誌『 致知』2014年8月号の玉三郎のインタビューから一部抜粋。
私は割と先輩方に可愛がられ、
厳しくされた覚えがないんです。
通りすがりの先輩に、
「おまえ、その襟の合わせじゃだめだよ」
「裾がこれじゃだめだよ」
「頭はこうだよ」
「顔の仕方がこうだよ」
って皆さんよく言ってくださったんですよ。
それは明くる日、すぐ直しました。
これはうちの養父の教育がそうでした。
守田の祖父(十三代目守田勘彌)が
草履の紐が解けたまま
花道から出ていく役があったんですって。
それを通りすがりの端役の俳優さんが
「旦那、草履の紐、解けてますよ」
と言ったので、
「あ、そう。ありがとう」
と言って、その場で結わいて、
直前に解いて舞台に出て行った。
それを見ていた養父が後で
「お父さん,なぜあそこで結わいたのですか」
と聞いたら、
「“これは解けているもんだよ”
と言ったら、その人は何かあっても
二度と教えてくれないだろう。
“ありがとう”
と言って聞かなきゃいけない」と。
そのように
養父が何度も語っていたことを思い出します